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コラム 人事の旬な話題

2025年12月26日

中小企業が賃上げを実現するために今できること

~原資不足でも外部競争力を高める「戦略的賃金設計」の実践法~

1.賃上げが避けられない時代、
どう乗り越える?

「人が採れない」「辞めてしまう」「賃上げしたいが原資がない」――

多くの中小企業経営者・人事責任者の方から、こうした切実な声を耳にします。2024年春闘では大手企業の賃上げ率が5%を超え、初任給の高騰も相まって、「うちも何かしなければ」と焦りを感じている方も多いのではないでしょうか。一方で、中小企業では原資(人件費予算)の乏しさから、思い切った賃上げに踏み切れない現実もあります。

今回は、「限られた原資で、いかに賃上げを実現し、外部競争力を高めるか」について、実践的なヒントをお伝えします。

2. 中小企業が直面する3つの賃金課題

1)原資不足と賃上げ圧力の板挟み

中小企業の多くは、売上や利益の伸びが限定的で、大手のような大幅なベースアップは難しい状況です。一方で、求人市場では初任給が急騰し、「新卒を採るために初任給を上げたら、既存社員とのバランスが崩れた」「賞与を減らして月給に回したが、社員のモチベーションが下がった」といった声も増えています。

2)外部競争力の低下による人材流出リスク

自社の給与水準が市場平均より低いままだと、「人が集まらない」「優秀な人材が流出する」リスクが高まります。特に、若手層や中堅層の流動性が高まる中、「外部競争力」を意識した報酬設計が不可欠です。

3)賃金カーブの歪みによる不公平感

初任給だけを上げると、「入社3年目の社員と新入社員の給与がほぼ同じ」「中堅層の昇給が頭打ち」といった”賃金カーブの歪み”が生じやすくなります。これが中長期的な人材定着・育成の障害となるケースも少なくありません。

3.限られた原資で効果を最大化する実践策

1)報酬水準の外部比較で
「勝負どころ」を見極める

業界団体や厚労省の賃金構造基本統計調査、求人サイトのデータなどを活用し、「自社の給与は市場平均と比べてどうか?」を定量的に把握しましょう。初任給だけでなく、20代後半、30代、管理職…といった階層ごとに比較することで、どの層が「割安」なのか、「割高」なのかが明確になります。この分析が、戦略的な原資配分の出発点となります。

2)原資再配分の仕組みで「選択と集中」を実現

全員一律の賃上げではなく、「外部競争力が特に低い層」「貢献度の高い層」に重点配分することで、限られた原資でも効果的な賃上げが可能です。また、最近増えている「賞与の給与化」は、安定収入を増やすメリットがある一方、モチベーション低下や評価制度との整合性が課題となります。例えば、賞与原資の一部を「業績連動型」に残すことで、メリハリを維持しつつ月給アップを実現する方法もあります。

3)賃金カーブ全体の是正で
長期的な納得感を醸成

初任給だけを上げると、若手と中堅・ベテラン社員の賃金カーブ(年齢・勤続年数に応じた給与の上昇曲線)が歪み、不公平感が生じます。賃金カーブ全体を見直し、年齢や経験に応じた適切な昇給体系を設計することが、長期的な人材定着につながります。

4.まとめと次のアクション

賃上げは「やらなければならない」課題である一方、「やり方次第で会社の未来を大きく変える」チャンスでもあります。限られた原資でも、外部競争力の弱い層を特定し、戦略的に配分することで、「選ばれる会社」への第一歩を踏み出すことができます。

まずは自社の報酬水準を市場データと比較し、どの層が競争力不足なのかを可視化してみてください。そのうえで、原資の再配分方針を検討し、賃金カーブ全体の歪みを点検することが、中長期的な人材獲得・定着の鍵となります。小さな一歩が、組織の持続的成長につながります。