コラム 人事の旬な話題

2026年01月30日
中小企業こそ人事指標の可視化が必要な理由
~人的資本経営を実践する第一歩~
1. 人事指標、経営層で共有できていますか?
「中期的な事業計画で重視している人事上のKPIは何ですか?」「現在の組織人事課題と、それが過去からどう経年変化しているか把握できるバロメーターはありますか?」――
営業の初動対応や人事プロジェクトの現状分析フェーズで、中小企業の経営層にこうした質問を投げかけると、多くの場合、経営幹部の中で自社が重視する人事指標について足並みが揃っていない、あるいは人事課題に対して感覚的な把握に留まり、具体的な数値で語れないといった状況に直面します。人的資本経営が叫ばれる中、「経営戦略と人材戦略の連動」や「As-is To-beのギャップ定量把握」の必要性は大企業では浸透してきましたが、中小企業では未だ「遠い世界」との認識が根強いのが実情です。
2. 中小企業が人事指標を可視化すべき理由
1)人事施策の有効性を検証するため
「これをすれば改善するだろう」との見込みで様々な人事施策を取り入れるものの、その有効性を検証・測定する仕組みがなく、惰性で運用しているケースは少なくありません。例えば、課題が「社員のスキル向上」だとすると、あるべき到達点とのギャップを量的に示すことができなければ、施策の効果は測れません。これを打開するには、効果測定のための成果指標を設定し、その数字を追いかけながら打ち手を変えていくアプローチが必要です。そのためにも、課題の改善状況を示す指標を経年でモニタリングしていくことが不可欠です。
2)外部市場からの人材獲得に向け
自社の強みを明確に打ち出すため
今や人材獲得競争は、企業の生き残りをかけた共通の経営課題です。待遇条件で大企業より劣る中小企業では猶更であり、如何に人事面で「尖った何か」を打ち出せるかが、採用戦略における要となります。このとき、比較可能な定量指標として自社の強みを訴求できれば、労働市場に対してインパクトを与えることができます。その意味で、差別化するための人事指標を設定し、経年で追いかけていくことが必要です。
3. 人事指標の可視化がもたらす効果
1)限られたリソースの選択と集中
予算やリソースが限られた中小企業こそ、数値で課題やその改善度を可視化することで、必要な人事施策の選択と集中につなげることができます。「何となく良さそう」ではなく、「この指標を改善するために、この施策に投資する」という意思決定が可能になります。
2)経営層と現場の共通言語をつくる
人事指標を設定することで、経営層と人事部門、さらには現場マネージャーが同じ目標を共有できるようになります。「離職率を○%下げる」「エンゲージメントスコアを○ポイント上げる」といった具体的な数値目標があれば、全社で一貫した取り組みが可能になります。
3)人事制度設計の逆算的アプローチ
弊社で人事制度構築のご支援をする場合に、成果指標となるKPIを見据えて逆算的な発想で設計しているのも、このような考えが背景にあります。ゴールとなる指標が明確であれば、そこから逆算して必要な制度や施策を設計できるため、より実効性の高い人事戦略が実現します。
4.まとめと次のアクション
人的資本情報開示の法的義務が中小企業では限定的または免除されているとはいえ、人事指標の可視化と戦略的設定は、施策の有効性検証と人材獲得競争の両面から不可欠なものです。まずは自社にとって「重視すべき人事上のKPI」「現状を把握するバロメーター」「採用面で訴求できる強み」が何なのか、経営層で議論してみてください。そこから人的資本経営の実践が始まります。