コラム 人事の旬な話題

2025年11月28日
従業員エンゲージメント調査で組織の本質的課題を可視化する
~離職・生産性低下を防ぐ戦略的組織診断~
1. 組織の見えない課題、
放置していませんか?
「離職が止まらない」「現場のモチベーションが上がらない」「人事施策を打っても効果が見えない」――
多くの経営者・人事責任者の方から、こうした組織課題に関する相談が寄せられます。近年、企業と従業員の信頼関係の度合いを測り、組織状態を可視化する指標として「エンゲージメント」が注目されています。単なる満足度調査とは異なり、エンゲージメントは組織と従業員の双方向的な関係性を表し、生産性向上や人材定着といった成果に直結する概念です。
今回は、組織分析の有効な手法である「従業員エンゲージメント調査」について、その意義と活用方法をお伝えします。
2. エンゲージメントとは何か、
なぜ重要なのか
1)従業員満足度・モチベーションとの違い
従業員エンゲージメント調査は、従業員から見た「会社とのつながりの強さ」を数値化して把握するアンケート調査です。会社組織や仕事に対する従業員のポジティブ・ネガティブな感情を測定し、組織の健全性を診断します。個人の居心地の良さや動機づけに着目する「従業員満足度」や「モチベーション」とは異なり、エンゲージメントは組織と従業員との信頼関係を表す双方向的な指標であり、より成果志向の概念と言えます。
2)組織の成功循環モデルとエンゲージメント
組織マネジメントにおいて、「関係の質」を高めることで「思考」→「行動」→「結果」のそれぞれの質を高めることができるとされています(組織の成功循環モデル)。その起点であり帰結こそが「関係性=エンゲージメント」です。エンゲージメントが低い組織では、どれほど優れた人事施策を導入しても、現場に浸透せず効果が限定的になるリスクがあります。
3. 調査結果から見える組織の本質的課題
1)給与アップだけでは持続しない理由
自社の給与水準が競合に劣るとして、給与額のアップに特化して対応しようとすると、社員の期待以上に給与が上がらなかったときに、まず関係性が悪化し、次第に思考レベルが低下し、前向きな行動も生まれず、成果も上がらないため、待遇アップも持続しないという悪循環になってしまいます。つまり、いくら報酬制度を改善しても、「関係性の質」が希薄な状態では、その効果は長続きしないということです。
2)報酬制度を通じた関係性の構築
逆に給与額が劣るような状況下でも、自分自身で待遇アップできる仕組み(報酬制度)を相互に理解し、共に考える姿勢を示すことで関係性が高まり、当事者意識が強まり、チャレンジ行動が生まれ、高い成果を上げるようになります。そうすることで、本人の待遇に繋がり、更に信頼関係が強固になり、目標が高まり、良いアイデアが生まれるといった好循環のサイクルが回り出します。報酬制度の本質は、金額そのものではなく、透明性と納得性を通じて「関係の質」を高めることにあるのです。
4.まとめと次のアクション
人事制度の制定・改定時や、顕在化した人事労務課題(労働生産性の低下、離職や休職の増加、採用難など)の根本解決に際しては、組織に内在するボトルネックを特定し可視化するプロセスが不可欠です。エンゲージメント調査を通じて、打つべき施策の絞り込みと実効性を高めることが可能となります。
また、従業員エンゲージメント調査は、課題発見から人事施策の検討につなげるだけでなく、実施した施策が組織に有効に機能しているか(エンゲージメントが高まったか)の効果測定にも活用できます。
まずは自社の組織状態を客観的に把握し、エンゲージメント向上に向けた具体的なアクションを検討することから始めてみてはいかがでしょうか